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短期賃貸借保護制度の廃止について(1)

短期賃貸借保護制度廃止の背景

本レポートでは、短期賃借権保護制度の廃止について解説致します。この法律は、平成16年4月1日に施行されました。


短期賃貸借保護制度とは、3年以下の建物賃貸借の場合、抵当権が設定された後で賃貸借契約を結んだ場合であっても、借主は抵当権者に対抗することができる制度となっていました。


そのため、競売によって所有権が移転された場合、買受人(競売によって物件を取得した新所有者)に対して明け渡しを求められても、賃貸借の契約期間中は住み続けることができました。


皆様もご承知の通り、バブル崩壊によって不動産の価格が暴落し、それに伴い不動産の不良債権が増えました。


私は一時期、不動産競売を担当していたことがあるのですが、物件調査に行くと、物件には所有者は住んでいないのですが、物件に【政治結社○○】など、怪しげなシールが貼ってあったりしました。


この短期賃貸借保護制度を悪用して、不当な利益を得ようと考える者たちの仕業です。占有屋と呼ばれる者です。


このようなことが頻繁に発生し、不良債権処理が円滑に進まなくなっていました。


その不良債権処理を円滑に進めるために、短期賃貸借保護制度の廃止の法律が制定されたというのが背景です。

不動産競売の流れ

ここでは、不動産競売の簡単な流れについて、お話し致します。


通常、賃貸住宅を建設する際は、銀行から借り入れをするのが一般的です。その際、銀行は物件を担保にして、建設資金を貸し出します。抵当権を設定すると言います。


その後、借入金の返済を行うわけですが、その返済が滞ってしまった場合、銀行は裁判所に競売の申し立てをします。


固定資産税などの税金を支払わない場合でも、同様な措置が講じられます。


簡単に言うと、


【お金を借りた人が、きちんと返済してくれないので、担保にしてある土地と建物を売って、返済に充てて欲しい】


これが、不動産競売と呼ばれるものです。不動産競売は簡単に言うと不動産のオークションです。


銀行などからの申立てを裁判所が受けると、その物件の情報を一般に公開します。そして、高く買ってくれる人を募集します。


この情報は、裁判所に行くと誰でも見ることができます。一般の新聞にも掲載されます。


そして、一定期間入札が行われます。これは、誰でも参加することができます。


そして、一番高い値段で入札した人が落札者となって、新しい物件の所有者になります。買受人(かいうけにん)と言います。




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短期賃貸借保護制度の廃止について(2)

短期賃貸借保護制度の廃止について

不動産競売によって、所有権が移転してしまった場合、そこに住んでいる人たちがどうなってしまうかと言うことがとても重要になります。


平成16年4月1日以前であれば、前節で説明した契約期間が終了するまで、買受人に対抗して入居することができました。


しかし、平成16年4月1日以降に抵当権が設定されている物件を契約した場合、短期賃貸借保護制度が廃止になったために、そのようなことができなくなります。


この内容は、賃貸契約時に交付される重要事項説明書に記載されています。


私の運営しております、賃貸アパマン研究室のサイトでは、賃貸借契約書講座を行っておりますが、そのモデル契約書の重要事項説明書を参照して下さい。


(モデル契約書は下記ページの国土交通省モデル契約書をクリックして下さい)

国土交通省モデル契約書とは?


国土交通省のモデル契約書の重要事項説明書には短期賃借保護制度廃止についての記載があります。


40ページの、


【Ⅰ 対象となる建物に直接関係する事項 】の【1 登記簿に記載された事項 】


を見て下さい。

本物件にはすでに抵当権が設定登記されていますので、借主は、その抵当権が実行され競売により買受人から明渡しを求められたときには、6か月までの間に明け渡さなくてはならないことになります。

なお、この場合には、貸主に預けた敷金についての精算も買受人には求めることができません。

この部分を分かりやすく説明致します。


本物件にはすでに抵当権が設定登記されているとは、


「これからあなたの住む物件には、大家さんが建物を建設する際、銀行からお金を借りています。銀行は万一のときのために、その物件を担保にお金を貸しています。」


と言うことになります。


抵当権が実行されるというのは、


「大家さんがお金を返済できなくなってしまい、担保として提供している物件を不動産競売(オークション)にかけること」


を意味します。


買受人とは、一番高い値段で入札して落札した人(新しい大家さん)です。


その買受人が、


「建物を使うので部屋を明け渡して下さい」


と言ってきたら、6か月以内に引越ししなければなりません。


これは、法的な拘束力を持ちますので、それを無視して6か月以上住み続けることは出来ません。


無視して住み続けた場合は、強制的に退去させられます。


この場合、契約時に預けた敷金は返還してもらえません。


この法律では、


【契約時に預け入れた敷金は、新所有者には引き継がれない】


とされています。


契約時に預けた敷金は、以前の大家さんが持っていることになります。


そして、競売によって所有者が変更されても、その敷金は引き継がれません。つまり、新しい大家さんは、敷金を預かっていない状態になります。


もし、敷金を返還してもらう場合は、預けた敷金を持っている、以前の大家さんに請求することになるのですが、大家さんは破産してしまって、今のような状況になっていますから、戻ってくる可能性は低いです。


このように、大家さんが破産して、不動産競売によって、新しい大家さんに所有権が移転された場合、重要なことが2つあります。


1.新しい大家さんが入居者に対して、『部屋を明け渡してください』と言われると、入居者は6か月以内に建物を明渡さなければならない


2.解約時に敷金が返還されない


ここで、ひとつ付け加えておきたいのですが、不動産競売によって、所有者が変更されたら、必ず部屋を明渡さなければならないと言うわけではありません。


引き続き住んでも良いと言われる場合もあります。


これは、買受人(新所有者)がその建物をどうしたいかによって変わってきますので、明渡さなければならない場合もあるし、引き続き住んでもよい場合もあります。


先程お話したとおり、敷金は買受人に引き継がれていませんので、場合によっては、新たに敷金を預け入れて下さいと言われる場合もあります。




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短期賃貸借保護制度の廃止について(3)

重要事項説明での取り扱い

短期賃貸借保護制度廃止の内容については、重要事項説明では必須事項とされています。


それは、抵当権が設定されている賃貸物件の借主は、抵当権が実行されてしまうと、先にも説明したとおり、不利益を被ってしまうからです。


説明すべき内容をもう一度整理してみると、

1.買受人から建物の明渡しを求められると、6か月以内に建物を明渡さなければならない

2.前所有者に預けた敷金は、買受人には引き継がれないため、買受人に敷金の返還を請求することができない。

前所有者に敷金の返還を請求しても、その経済状況から返還を受けられる可能性が著しく低くなること。

3.買受人から引き続き住んで良いと言われた場合でも、賃料の値上げ、新たに敷金を預け入れしなければならなくなる可能性があること。

これらは、すべて借主にとっては不利益になる事項になるので、必ず重要事項説明を行い、借主にはきちんとそのリスクを認識してもらった上で、契約をすることがとても重要になってきます。


よって、短期賃貸借保護制度廃止の内容を説明せずに契約、その後抵当権が実行され、借主が明け渡しを求められた場合は、借主から損害賠償請求の訴えを提起されるおそれがあります。


もう一点、重要なことがあります。


それは、差押物件は仲介しないと言うことです。


差押物件は、将来的に不動産競売に移行する可能性が高くなるので、そのような物件は仲介しないようにします。


近い将来、抵当権が実行されて、所有権が移転されるのを知っていて、仲介したらどうでしょうか?


借主はいずれ明け渡しを求められる可能性が非常に高くなり、その場合の引っ越し費用や、契約にかかる費用を新たに負担することになります。


そのような物件を仲介した不動産会社は、借主から損害賠償請求を起こされることになりかねません。


あと、意外と多いのが、差押物件と知らずに仲介してしまうケースです。


しかしながらこの場合は、事前に登記簿謄本を取得して、物件が差押えされていないかどうかを確認すれば回避できます。




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病死・自殺物件の告知について(1)

はじめに

不動産投資では様々なリスクが存在します。


賃貸物件を管理運営していく中で、最も取扱いが難しいものが、物件内で事件・事故が発生した場合です。


事件・事故とは、物件内で殺人事件や自殺、病死後時間が経過、腐乱死体として発見された場合などを言います。


例えこのような事態が発生しても、その部屋をきちんと原状回復し、
次の人に貸し出しをしなければ、収益は一気に悪化します。


当然、次の人に貸し出す際は、契約時の重要事項説明時に告知をしなければなりません。


その告知方法について、明確な基準がないため、各々の見解で対応されているのが現状だと思います。


(財)日本賃貸住宅管理協会主催の「賃貸住宅管理士資格認定研修」に参加し、「最近の相談事例に学ぶ賃貸住宅管理のありかた」の講義を受けました。


そこで、「病死・自殺物件での告知」についての話がありました。


法律ではありませんが、このように対応することが望ましいとの(財)日本賃貸住宅管理協会の見解が述べられています。


大変参考になる事項と思いますので、その相談内容と回答に加え、私の見解、実務上のポイントについて解説致します。


【引用】
最近の相談事例に学ぶ賃貸住宅管理のあり方
財団法人 日本賃貸住宅管理部会

相談内容と回答

1.室内で病死した場合、新規入居者に重要事項説明で告知しなければいけないのか? (当日発見され病院に運ばれたが、発見した時にはすでに死亡していた状況)

2.建物の一室から異臭が漂い、住人から苦情がありました。入室し死体を発見したがすでに腐乱していました。

その後、新規入居者が決まりました(重要事項説明で告知しました)今回その方の退出に伴い、新たに募集をする場合、以前起きた事故の事実を告知しなければいけないのですか。

また告知義務の場合、これから何年間告知していかなければならないのか?

状況判断

病死の場合の重要事項説明については普通の病死と時間的経過によって異常な状況の発生の場合に分けて考えなければならない。


死後あまり日数が経過していなく普通の状態での死の場合は重説での説明は不要と考えられる。


宅建業法第47条1項は業務に関する禁止事項として「重要な事項について故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」を禁じている。


そして、その例として「自殺」や「病死の異常の状態」等を嫌悪すべき心理的瑕疵(隠れた瑕疵)とし、また周辺の嫌悪施設(ゴミ焼却場、葬儀場、いかがわしい宗教団体、暴力団事務所等)については重要事項説明でしっかりと説明する必要がある。


説明しないで、入居後にこうした状況を賃借人が知るところとなり(契約時にそれを知っていたら借りなかったような瑕疵あるいは環境の場合)宅建業法第47条の違反と同時に賃借人から契約解除、引越し等の事態になった場合は瑕疵担保責任の問題が発生し、損害賠償を支払わなければならない事態になる。(民法566条、570条)

回 答

今回の場合(1の場合)は勿論、重説の必要はないが、2の場合のように病死の場合でも、時間経過による異常な状況の場合として重要事項の説明をしなければならない。

その期間は自殺と同様の6年程度が望ましい。

従来は自殺のみに適用されていた重説が病死の場合にも適用されるようになった経緯は、最近のようにマンション等で死亡した場合に、近隣との付き合いがないような閉塞した状況の中で、死亡の確認が遅れ何日も何ヶ月も経ち、腐乱しているような状況で次の賃借人が非常に嫌がることは理解できるので、重説で説明することが必要で、その期間も自殺と同程度の期間、説明した方が良いと思われる。


以上までが、「最近の相談事例に学ぶ賃貸住宅管理のあり方」の引用部分です。




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病死・自殺物件の告知について(2)

見解

室内で入居者が亡くなった場合、次の入居者にその旨を告知しなければならないということは、ご承知のことと思います。

ただし、


・どのような状況の場合、告知をしなければならないのか?

・告知しなくても良い場合はあるのか?

・告知する場合は、いつまで告知しなければならないのか?


ということが問題になります。


その物件を取り壊すまで、告知をしなければならないとなると、貸主は非常に不利になります。


(財)日本賃貸住宅管理協会の見解では、病死でも、すぐに発見された場合(1日程度)は、告知は不要としています。


ただし、病死でも死後数日から数ヶ月経過し、腐乱した状態であるならば、これは「異常な状況としての病死」として告知しなければならないとしています。


以前は、自殺に関してのみ、告知が必要とされていましたが、近年の状況では、そのような状況の物件が嫌悪されることがあり、自殺同様の告知が必要であると述べられています。


以上までの内容をまとめてみると、


ケースとしては、


 1.「自殺」と「異常な状況としての病死」

 2.「室内で病死したが、すぐに発見された場合」


の2つに分類されると思います。


告知についてですが、


1.自殺と異常な状況としての病死

 ◆ 告知が必要

 ◆ 告知の期間
   事故発生から、6年程度までは告知するのが望ましい
   (東京都の場合、自殺は10年としている)


2.室内で病死したが、すぐに発見された場合

 ◆ 告知は不要


ということになります。


あくまでも、法律ではなく、こうすることが望ましいとの見解ですので、これが正しいと言うことではありません。


しかしながら、このように公的な機関から、見解が発表されるということは、非常に意味があるものだと思います。

実務上の取り扱い

それでは、実務上はどうなのか?

自殺物件で、自殺から6年経ったから、告知しなくても、それですべてのトラブルから回避できるかというとそうではありません。


実際に入居者が6年経ったから、気にしなくなるかというとそうではありません。


・10年たっても20年たっても、気にする人は気にする

・1ヶ月でも気にしない人は気にしない


というのが実情だと思います。


机上の論理と実務の論理で異なってしまうものです。


「実務的には、これを基準に、かつ近隣の方もうわさにしなくなる頃合いを見計らって告知をするかしないかを、決めていく。」


やはり、その事故物件や近隣状況を注意深く見ながら告知について考えていく必要があるでしょう。


現在、賃貸物件は供給過剰の状態が続いています。借りる側が、自由に好きな物件を選択することができます。


つまり、事故物件に積極的に住む理由はないのです。


事故が発生したことを隠しておけば、表面上は他の物件と変わりはありません。


しかし、隠ぺいしたことが入居後に発覚してしまった場合、最初に事故物件であることが分かっていれば、住まなかったということも当然考えられます。


そうなると、貸主や管理会社が損害賠償の責を負うことになります。


貸主にしてみれば、隠しておいてそのまま借りてもらったほうが、収益も悪化しないし、分からなければそのほうが良いと思われるかもしれません。


しかしながら、近年の企業の様々な偽装を見て頂ければお分かりだと思いますが、顧客に不利になるような事項を隠ぺいしたために、その後発覚、信用の失墜、大きな損害をこうむってしまう例が後を絶ちません。


中には、倒産してしまう企業もあります。


これは、自己の利益しか考えない自分勝手な行動をしてしまった結果で、社会的制裁を受けても仕方のない部分だと思います。


こうならないためには、事前に事実をきちんと告知して、貸主及び借主双方が納得をした上で住んでもらうほうが、結果的には良いと考えています。




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